ハーレムで体験した初リーディング

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10月23日から11月13日まで、New York Literary Festivalが開催された。49カ所で詩、フィクション、ノンフィクション、演劇などに関する朗読会、講演、パネル・ディスカッションが行われたのである。

私もこのイベントのひとつに参加して、11月9日、英語によるエッセイを朗読した。場所は詩の朗読会で知られるハーレムの元シュガー・シャック(現ストライバーズ・カフェ)。アフリカ系アメリカ人の文化組織フレデリック・ダグラス・クリエイティブ・アーツ・センターの主催で開催された。

このセンターで学んだことのある10人のライターが、それぞれのスタイル、それぞれのファッションで、詩、小説、エッセイ、戯曲を読んだ。ヒップホップ、カリビアン、南部、奴隷制といったアフリカン・ダイアスポラのキーワードが噴出した約3時間。外国人は、私のほか、オーストラリア人もいた。全員、女性だった。

読み手を募集していることを知った時、朗読が盛んなこの国の文芸事情にもっと近づきたいと思って躊躇することなく応募したものの、実際に読む番が近づくと緊張してきた。人前で自分が書いた作品、しかも英語の作品を読むのはもちろん初めてだった。

マイクもないのに、カフェにやってきた数十人の人に聞こえるように読むことからして、ひと苦労のように思えた。自宅で練習した時には、作家が書店でのリーディングでやるように、読みながらも、たまに目を上げて聴衆を見るようにしたが、実際に人前に立つと、発声や発音・イントネーションに気を配るだけで顔や目線を移動させる余裕はないと思い、読むのに専念することにした。

エッセイは、戦後の日本人のアメリカナイゼーションを食卓を例にとって描いたもの。果たして外国の文化に疎そうな聴衆が受け入れてくれるか不安はあったが、最後まで熱心に聞いてくれたようだった。

自分がアポロ劇場のアマチュア・ナイトでヒップホップ・ダンスや歌を披露する日本人のように思えなくもなかったが、読み終わった後は、この言葉でのコミュニケーションが重視される国で、他ならぬ英語というリングア・フランカで何かを伝えたという達成感があった。

朗読を終えた4日後、奇しくも、このエッセイが掲載されることになっていたAsian Pacific American Journalの最新号がやっと発刊されたとの連絡が来た。掲載が決まってから1年5カ月。アメリカの文芸界の片隅に入りこんだ気分になった11月第2週であった。                            (八巻由利子)

photos: Fumiko Ohno
Asian Pacific American Journal, Food & Childhood Issue, vol.11, 2003

www.aaww.org