「ブラック・ベルト」展
(2004年1月4日まで開催)
back

スタジオ・ミュージアム・イン・ハーレムで「ブラック・ベルト」展を見た。オープニングの日、入り口付近で、隣に立っていたやせた男性と軽く衝突し、見上げたらラッパーで役者のモス・デフだった。珍しくミーハー心がうずいたため、いつになく展示作品への集中度が低下したが、グループ展の欠点が作用した、脈絡のない展覧会であった。

テーマは、黒人とアジア系アメリカ人の、1970〜80年代に流行したブルース・リーを中心とするカンフーへの憧れ。デビッド・ハモンズ、サンフォード・ビガーズ、エレン・ギャラガー、ポール・ファイファー、デヴィッド・ケイノら黒人とアジア系の作家、19人が参加しているが、圧倒的に黒人が多い。ちなみにキュレーターは、当館の看板テルマ・ゴールデンではなく、アシスタント・キュレーターで韓国系アメリカ人のクリスティン・Y・キム。

この展示で扱われているカンフーや浮世絵は、アジア系アメリカ人の文化ではなく、アジアの文化である。黒人から見たら、それらは一緒のものだが、アジア系アメリカ人としては、自分たち独自のカルチャーを確立していないために、ルーツであるアジアの伝統文化をもってくるしかないのだ。黒人のカンフー礼賛を物語っているが、底流には、アジア系アメリカ人のアイデンティティーの問題が横たわっているのである。それは、アジア系アメリカ人のみでなく、西洋化したアジアのコンテンポラリー作家が世界に出て行く際に直面する問題でもある。

この展覧会に比べれば、ヒップホップ文化のアメリカ内外への影響を見せた2年前の「One Planet under a Groove」展(ブロンクス美術館)のほうがずっとパワフルだった。それだけ、黒人文化の存在が強烈だということなのだろう。

(八巻由利子)

144 West 125th Street
New York, New York 10027
tel: 212-864-4500
www.studiomuseum.org

Iona Rozeal Brown
a3 black face #3, 2002

Y. David Chung
Bruce, 2003