「ドキュメント 女子割礼」発刊
ーーやっぱり「女は世界の奴隷か」

back

ニューヨークに長く居住していたフォトジャーナリストの内海夏子さんが「ドキュメント 女子割礼」(集英社新書)の出版を記念して、ニューヨークの紀伊国屋書店でサイン会を開催した。

女子割礼については、日本にいた時は全く知らなかったが、ニューヨークに来た当初、アリス・ウォーカーら一部のアフリカ系アメリカ人女性たちが問題視していたため、耳にするようになった。アフリカ移民がこの風習を持ち込んでいるため、アメリカ国内の問題ともいえるのである。

アフリカ6カ国を取材して書いた労作の前半は、女子割礼の歴史と恐るべき現状。アフリカの28カ国で実施されているこの風習は、紀元前の古代エジプト時代からあり、19世紀の英米でも、一時試みられたという。地域によって異なる割礼の度合いについて具体的に記述されている。また、必ずしもイスラム圏の風習ではない点を強調。後半は廃絶への運動に割かれている。この部分に希望がある。

伝統なのだから部外者が一概に非難できることではないという意見もある。しかし、千年の歴史を誇った纏足もほぼ消滅したのだ。五体満足な人間として生まれた少女が、身体の一部を切り取られたり、縫い合わされたりするという蛮行は廃絶されるべきである。

悪しき伝統は、その被害者によって維持されることが多い。足の小ささを競った中国の貴婦人たちと同様、身体を傷つけられた母親たちは、割礼しないと大人の女性ではない、結婚できない、健康な子供が生まれない、淫乱になる、などという迷信のもとに、娘を抑圧してきた。もちろん背景には、男性による女性の人権侵害がある。それ自体が国境を越えた「世界の伝統」である。この本にもあるように、廃絶には、男性との結婚によってしか生きられないアフリカ女性の現状を変革させる必要もある。

廃絶運動の推進者は、伝統に背を向け「異端者」のレッテルを貼られた女性たちだという。社会を変えるには、異端者=内なる他者やよそ者が必要だ。(八巻由利子)