たまたま日�

Text by 森周�


第�回 〜森の獣たち�


 あ�世�あ�子に会いたい、一目で�から会いたいと、小さく肩を震わせながら妻はまた泣く�であった�

 ロシアンブルーの少し憂いを含んだ優しい瞳の賢�あった�に、あの夜、アンタが�って寝込んでさえ�ければ、あんな惨�にはならなかった�に、無口のあ�子�最期�叫びがいつまでも耳から離れな�、人目も�ばからずし�りあげるのてあった�

 初夏�週末の小さな村�ダイナ�で朝食をとる地��客連が朝っぱらから女を泣かせる男の私をコ�リ返り見るのである。なす術もな��窓�外に顔を向け、小雨に煙るキャ�キルの山�眺め�4年前に消えたあの子�事を一人思うのであった�

 それにしても、デカく�暴な描であったと。当時6才で、�体が灰色の腹と口先が白く白足袋をは�そ���、キャ�キルの山あいで生まれた描だった�

 そ���小学生になりたての一人娘がペットが欲しいと言�したので、ケモノ関係なら任しておけと、これでも若���ト科�雌にケダモノと呼ばれて�こともある父である。まず�猫なら手もかからずよかろ�、その地に住�友人の知り合�ら、彼が雌、私が�一匹づつもら�けたのである�

 人格にそぐ合わな�前を付けられて小さ���ら苦労した私��は踏ませぬと、�人の家のそれらしく幸吉と名付けられたヨチヨチ歩き�そ�描�、当�「猫は好きくな�と言って�妻を簡単に手なずけ、「アンアン」と啼け��でも旨�のが食べられる「主婦の友」�座を獲得し、またたく間に巨大な描になった�であった�

「ああ幸吉カワイイー�と、わが子より可愛いと、人妻のしょせん満たされな��した��を過激な母性にすり替えて、そのロシアンブルーにそそ�のであった�

 人の世には積み木くずしと�のがあるが、猫の世にもある�である。溺愛された過保護の描もくずす�である。「こんなタマ無しに誰がした。このアマ!もっと�メシ食わせろ�」と、家で物書く妻のファ�スを叩き落とし、留守電、コピ�機、ワープロと次�壊し家庭�力�続いた�であった�

「やっぱり一人っ子��な�」、このままじゃ、わが子同様�が思い�れると、この際だからもう一人、い�匹欲しいと妻の腹でな�のが�れたのであった�

「女の一生」�無�短�半と無惨に長�半で成り立つと、すべてに短め�男達�陰で言�、描版�それは無�へったくれもなくすみ�に進むのである。幸吉と一緒に生まれ、友人に引き取られた雌猫モモは生まれて3年目にしてオババになって�のである。そして彼女の孫が、つまり幸吉にとって姪の子�勘平が新たにわが家の一員に�わった�である。「幸吉も勘平もカワイー�」とまたしても妻の無自覚な溺愛�続くのであった。「このままでは、いけ�え」、タマどころか骨抜きになっちま�、つ�わが父性が奮�った�である。たまたまキャ�キルの森の中に土地を所有して�私�、その猫の額ほどの土地を猫のために�開き、中古の小さなキャンピングトレーラーを据え�末ごとの特訓に連れ�すことにしたのである�

「い�、お前らー��ここは2食昼寝付�カワイコチャンでは生きられな�物のケダモノワールドだ。一歩��ば一食にされてしま�ビシイ渡世だ。とりあえずはネズミでも捕えて、ここ�高貴な未開�精神を学び、オスを磨け」と、トレーラーの下で怯える2匹に向いどこかのヨ�スクールの校長のごとく、ビールを飲みながら訓�をたれた私であった。「ず��んとアルコールのしみた父性�わ�」とわが特訓を怪しみ同行して来た妻は、すかさず横ヤリを�れてきたのであった�

 そしてそ�夜、悲��起きてしまった�である。「描の叫び声が聞こえる」と妻に叩き起こされた私�、�ててパン�枚で懐中電対を手に真っ暗な外に飛�出したのであるが、恐怖で�る勘平を見つけ�したのみてあった。翌日も妻と手�けして早朝から暗くなるまで森の中を探し回った�であるが、幸吉を発見することはできなかった�てある。翌週もまた翌週もそしてまたその翌週も「幸吉��また来たから�一��ておいで」と、母�来ました今日もまたと「岸壁�母」�ごとく狂ったよ�森の中を彷徨し続ける妻であった�

 幸吉�森のケダモノと戦って死んだの�。勇気ある名誉�戦死�と嘘�く私に「アンタが幸吉を殺したのよ。アンタこそ森のケダモノだ一�と激しくなじり、やがて私に口も聞かなくなり朝食も作らぬ妻になって�た�である。しかしながら死ぬも�あれば生まれるも�ありの世�常で、未�モモと暮らす勘平の母親が�然にも幸吉が消えた日に出産して�のであった。そして幸吉�生まれ変わりで勘平の実�弟、幸太郎がわが家に来るにおよび、とりあえずは朝�コーヒ��け�復活したのであった。それでなくても中年期�男は家庭�事からも突き放される���在である。よかれと、やることすべてが裏目にでる時期である。せっかくのわが父性発露も半日ももたずに面目を失った�であるが、その��空白を埋めるべく、私一人の週末�け�「森の生活」�そ�年の終りまで続いた�であった�

 そして長��が終り、春のかすかな香りを�ンハッタンのわがアパ�ト�窓辺で終日かぎまくるタタマナシ�を見て、こんな街中で糖尿�死なせるよりもと、また突然、わが父性は発�た�である�

 父性なきところは��ると、今�日本の体たらくをとくと見ろと、妻の猛反対を押し�り、またも私�特訓�再開された�であった。今度は慎重にと、土地の回りの薮を�り取り見渡しよくし、デ�と猫用のドアをトレイラーに付け、安�強化に励んだかいあって、何事もなく平和な2回�夏�またたく間に過ぎた�であった。今や妻の顔に笑顔も戻り、朝食にト�ストくらいは出るよ�父性の復権を果たし、猫ともども�信満�こ�春は早め�キャンプに出かけた�であった�

 そして今年3回目の5月末の連休日、亡き幸吉�話を美しく飾りたてながらこ�原稿を書き始めて�矢先、今度は勘平がコ�ときえた�てあった。This is a big problem!と、戻って来なければ今度こそ私�すべてを失�頭の中が真っ白になった�である。まず�落ち着けと、ビールを飲みながらトレーラーの中を見渡すと、妻が使って�香水の瓶が目に入った�である。これだーと、�け方に降った雨で勘平は自ら歩�道�匂いを失った��と。私�まずその香水を靴にたっぶりと浸みこませ、トレーラーを中�四方の森の中に�入った�である。だんだんと残り少なくなるオスカー�レンタを小しづつ撒きながら、このハゲの男の作った香水が毛だらけの迷える猫を救えるのであろ�リと疑問に思いながらも「勘平�カンベイ�」とゼ�したのであった�

 そ�夜遅く、わが家に帰ってからの�日間�私��は「よくもオメオメと帰ってこれたわね�」�部�け残し未�に空白のままである。その後�かったことであるが、妻はスクラ��してあった新聞記�(��が犬を発見した話�を取り�し、イーストヴィレ�にある「エンチャントメント」と�ウイ�ハウスに出かけ、�ーラと�女性から勘平はすでにトレーラーに戻って�と、今私�彼にそこに�ようにと言ったから、も��、この猫の形をしたローソクを�り口のところで灯し、あなたも彼にそこに�ように祈りなさいと言われて帰ってきたのである。そしてそ�週の金曜日、私と妻は半信半疑でキャ�キルにむかった�であった。トレーラーのバンクベッド�上で小さくうずくまる勘平を�見したとき�妻の��、ここでは恥すかしくて書けな�、禿げデラ香水がき�のか、�ーラの祈りがき�のか、どちらにしても、まず�メ�クわが家の描騒動は終ったと、私�深く�を撫で下ろす�であった。ヤレヤレと�

06/01/1997月�「ZIPANGU」vol. 22