| 特別寄稿 |
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愛国主義への正しい対応 ケビン・ダネガン著 |
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| 愛国主義への正しい対応 ケビン・ダネガン著 私はアイルランドで育ち、現在はアメリカに住んでいます。ニューヨークとワシントンにおける今回の残虐行為は、爆撃や殺人が日常茶飯事だった子供時代の思い出と比べても最悪の部分に匹敵します。火曜日の襲撃による死亡者の総数は、おそらく北アイルランドの30年間にわたる宗教戦争の死亡者をしのぐでしょう。 個人の自由と言論の自由をアメリカの優れた部分と考える者にとって、今週のメディア報道の大半は恐ろしく、背筋の寒くなるものでした。怒りと復讐心によって、良識は一気に覆されています。政府に加え、その片棒を担ぐメディア、軍隊、学界、ビジネス界の専門家たちが展開する巧妙な世論操作の実体は、まだ明らかにされていません。 この国は、まだ正体もわからない敵と戦争を始めたがっているように見えます。チアリーダーのような煽動者たちがテレビやラジオで活躍の場を与えられ、愛国主義を武器に怒りと憎悪をかき立て、いっそうの暴力行為を推進しています。特に、1995年のオクラホマシティ爆破事件で非難の矛先となったアラブ人たちが再び攻撃されています。しかし、当時の真犯人は元アメリカ軍人でした。1941年の日本軍によるパールハーバー襲撃を思い出す人もいるでしょう。当時は日系アメリカ人が駆り集められ、強制収容所に監禁されました。ただでさえひどい差別を受けているアラブ人たちは、いったいどんな目に遭うのでしょうか。 サミュエル・ジョンソンが改訂したH.L.メンケンの発言にもあるとおり、愛国主義は悪徳の温床であり、長年の宣伝がもたらすその影響力は、宗教をもしのぐ可能性があります。それによって煽動政治家、軍部の抑圧者、誹謗中傷者、歪曲された歴史の提唱者などが力を得るのです。その理念は完全に「目的のためには手段を選ばず」に基づいています。基本的な事実を認めず、異論を唱える者はルール無用で攻撃して良いのです。 ここで事実を冷静に振り返れば、得るものは多いはずです。 まず、罪のない数多くの犠牲者たちは、ほとんどが秘書、掃除夫、事務員など朝9時前に出社する人たち、そして消防隊員や救急隊員などでした。大惨事や戦争の例にもれず、この事件でも貧しく罪のない人たちが最大の犠牲者となったのです。こうした勤労者たちはアメリカ中そして世界中で、経済的・政治的な抑圧と、国粋主義・愛国主義の抑圧にもっとも苦しんでいる人たちです。彼らの姿は敵味方にかかわらず、北アイルランドや中東など戦争地域の被害者たちと共通しています。 次に、アメリカは世界中で、良いことも悪いこともしてきたと認める必要があります。政治家がなんと言おうと、アメリカに異議を唱える世界中の人々は、民主主義、公民権、言論の自由といった、アメリカの良いところに反対しているのではありません。当然ながら、こうした権利が認められない国に住む人たちのほとんどは、こうした権利を求めているのです。実際に多くの活動家が努力を続け、アメリカはその手本にもなっています。アメリカに異議を唱える人々は、アメリカが世界各地で行ってきた数多くの問題行為に反対しているのです。インドネシア、サウジアラビア、中南米などの独裁政権や専制君主に、20世紀の間ずっと政治的・軍事的援助を行い、今も続けていることはその一例です。こうした事実は隠されてはいないものの、ほとんどのアメリカ人には知られていません。 米ソの冷戦が終わって以来、アメリカへの抗議は、経済力に物を言わせた他国の抑圧、主に第三世界の国々の抑圧に集中してきました。こうした新しい植民地主義、もしくは欧米の経済制覇は、米国民の明確な承認なしに展開されています。何百万人もの子供たちが飢え死にしていく国々、罪のない市民が(米国民の税金による)アメリカ支給の兵器によって殺されている国々に住む人たちが、激しい怒りを抱いていることは充分に理解できます。 けれども、入居者の密集した建物に民間機で突撃することは、正しい対応ではありません。かつてバートランド・ラッセルが書いたとおり、「政府の適切な措置に基づく絶対多数の合意」が得られない行為こそ、もっとも理不尽で非道なものです。このことは、火曜日の自殺特攻により、罪のない数千人の勤労者を犠牲にした無分別な行為に通じています。また、軍事力を行使してさらに多くの、ほとんどが罪のない人々を殺し、それによって犠牲者に報いようとする無分別な考え方にも通じています。 軍事介入、圧政、罪のない人々の抑圧を30年間続けても、北アイルランドの宗教対立がもたらす憎悪と暴力は消えませんでした。米国民は、これに通じる「愛国的」反応を抑制する必要があります。そして憎悪と紛争の真の原因である経済的・政治的抑圧、国粋主義・愛国主義による抑圧を打ち破るために、世界中の勤労者と協力しなくてはなりません。 翻訳:大中裕子 |