| 特別寄稿 |
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第三次大戦とさえ呼ばれているアメリカへのテロ、いかに戦うべきなのか |
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| 2001年の9月11日以来、何かが変ってしまったかも知れない。ハイジャックされた2機の飛行機のスイサイド・アタックで世界貿易センターの二つのビルが消滅してしまった日以来だ。まず膨大な数の犠牲者に追悼を捧げたい。 最初に惨事を知ったのは電話でだった。信じられなかった。CNNをつけるとツインタワーの片方が燃えていた。そして単なる事故かテロかと考えているうちにもう一つのビルにまたもや飛行機が突っ込んできて爆発。じゃんじゃんかかってきた電話に対応し、アパートの屋上に出た数分後、今度は片方のビルが上から大爆煙をあげて崩れ落ちてしまった。その後、いっしょに屋上にいた黒人のコンストラクターが救出のボランティアに行くと言ったので、現場に彼の車で駆けつける。が、10ブロック近くまで行ったとき、最後のビルまで崩れ落ちでしまった。見ていた周りの人たちは叫び声を上げた。その間を恐怖で引きつった人が逃げてくる。肉親や友人たちの身を案じてパニックになり泣き伏せていた者もいた。逃げ遅れた人、彼らを助けようとして同じく一瞬にして瓦礫と煙の中で命を落とした者たちのイメージがこびりつく。頭が真っ白になり、身体の中から何か大事なものが抜けてしまったようになっていた。 当たり前のことだが、罪のない一般市民をターゲットにするテロリズムは決して許されるべきものではない。今回、世界貿易センター、ペンタゴン、そして完全達成されずに未遂に終ったとはいえ、ハイジャックされた後ペンシルバニアの森で爆発してしまった飛行機でのテロ攻撃で、テロリズムに対するアメリカの姿勢は揺るぎないものになってしまった。自由と民主主義の国アメリカに対する戦争として受け止め、アメリカへのテロを無くすためにはどんな手段でも選ばないと宣戦を布告したのである。ブッシュは今回のテロリストたちにはっきりと報復を誓っている。直接行動を起したテロリストだけではない。彼らをかくまい援助する者たちも同等に扱うと。 テロ対策もこれまでとは違ったものがオピニオン・リーダーたちの口から吐かれている。単に空港などでのセキュリティ・チェックを厳しくするだけではない。過去3代の国務長官、ベーカー、シュルツ、イーグルバーガーが、「ヒューマン・インテリジェンス」への再投資をと、口をそろえて唱えた。ヒューマン・インテリジェンスとは CIAやFBIのスパイ活動のことだ。冷戦崩壊後、年間何十億ドルの予算が削られた。それがテロリストたちに迅速に対応できなかった大きな原因の一つだと諜報活動の専門家は見ていたのである。そのため、新たなヒューマン・インテリジェンスの充実が叫ばれているのだ。 こうした空気の中で一般のアメリカ人の間に急激な愛国精神とテロリストたちへの具体的な行動を求める声が高まっている。街中、いやアメリカのいたるところで星条旗が見られるようになり、カフェでは、「テロリストに報復を」、「彼らに対して戦争を起そう」、という声が決まって聞こえてくる。戦争を嫌悪していた友人のグラフィック・デザイナー、エディ(47歳)までこういう。 「アメリカは何もやってないんだぜ。今まで起こった戦争だって、俺たちから始めたことは一度もない・・・自分たちの国では何をやってもいいけど、俺たちに手を出すな。アラーなんかくそ食らえだ。原理主義者なんか殺ってしまえ」、と。そしてこうした世論の動きを察して、上院も下院もテロ攻撃を受けた数日後、ほぼ満場一致で武力行使を承認してしまった。 が、ジャーナリストの友人マシューは懸念を示す。 「ヒューマン・インテリジェンスを増やすってことは単なるスパイ活動に終わらない。人権や表現の自由を制限することに繋がる。それどころか、さまざまな非合法の破壊活動が行われることにもなる。過去アメリカはそれをやり、今回のテロリストたちだって、もとをただせば、アメリカ自身がかってのソ連やイランに対抗するために造りだした怪物だ」、と。 愛国心と好戦ムードの高まりは、単純なステレオタイプ化と一般化をうんだ。とりわけアラブ人に対して。誰が今回の容疑者かまったく判ってない爆破直後、すでに街では、「ファック、アラブ!国に帰れ、さもなければ殺せ!」という声が叫ばれていた。オサマ・ビン・ラディンが容疑者に上げられてからは、反アラブと反イスラム感情はますます大きくなり、周囲にいるアラブ人に対する暴力沙汰も起こり始めている。友人のエディが言った言葉の中にも一般化があった。アラーはアラビア語で神を意味する言葉だが、この神はユダヤ、キリスト、イスラムに共通する同じ神だ。また原理主義者とは純粋の宗教を信じる者たちのことで、ほとんどすべてが平和主義者だ。ちなみにアメリカに対する攻撃の単純化は今回のテロを日本が仕掛けた真珠湾攻撃以来の攻撃だと比較することによって日本も巻き添えにした。 とはいえ、ブッシュ自身は別にしろ(昨年の5月までタリバンとはロックバンドの名だと思っていた男だ)?の政権は切れる。いままでアメリカに対してテロ攻撃があった場合、レーガンにしろ、ブッシュの父親にしろクリントンにしろ、すぐさま武力による報復を加えてきた。そして国際社会から多かれ少なかれ非難を浴びた。だが、今回はNATO、国連、それにアラブ諸国のコンセンサスをとった上で行動を起そうとしている。武力行使への国際法の枠組みを造ろうとしているのだ。国連がのらなくても、NATOの承認さえとれれば、コソボの例が示すように事後承認化できる。それが 物議をかもしだしたとしても。 また14日にワシントンのナショナル大聖堂で開かれた犠牲者の追悼式でモスラムの僧に最初のスピーチをしてもらっていた。モスラムがアメリカ社会の一員であることをアメリカ中に認識させようとしていたのである。だが、こうしたことだけで十分だろうか。それだけでテロを撲滅できるだろうか。 かって国務省で働き現在国連で働いているあるモスラムの女性は匿名希望でこう語る。「今回のテロはアメリカにも責任がある。アメリカは自らの国益のためなら、人権、国際法、それに国際社会との協調などなんとも思っていないもの。それどころか、国益を強化するために、自分たちに都合のいい政権に武器だって援助している。イスラエルやコロンビアがそう。そのおかげで無実の人がたくさん殺されている。そうしたアメリカの責任問題を解決しない限り、テロは今後も起こってくるわ。もちろん、今回のアメリカへの攻撃は絶対許されないテロ行為。このところパレスチナへの同情が高まっているのをよいことに、独断的にかってに解釈したイスラムの教義のためにやっただけ。だから今回の首謀者たちに報復するのは私も賛成。でも、テロと言われているものの中には民族の解放闘争も含まれているわ。国連憲章でも認められた自決権のために戦っている人たちのね。明確な線引きはとても難しい。そりゃあ、武力闘争もほんとはいけないわ。でもそんな彼らを、自分たちの国益だけで、それも非合法な形で追い込んでしまえばテロに走る可能性がある。あるいは少しでも攻勢にたとうと他のテロリストグループと結びついたりする。テロか解放闘争かどうかは、その時のパワー・ポリティックスや人権の高まり、そして運によって簡単に変ったりすることがある。そのことを彼らはよく知っている。たとえば、コソボのKLA(コソボ解放軍)はかってアメリカからテロリスト・グループと指定されていた。でもミロシェビッチがアメリカの邪魔になると決めてからは、KLAを軍事的にも政治的にも援助し始めたわ」 知り合いのプエルトリカンのミュージシャン、フレディーも同じようなことをいう。「今回ニューヨークで起こったことは規模が違うけど、パレスチナや他のいろんなところでは日常茶飯事に起こっている。間接的にしろ、アメリカのおかげでね。アメリカはそのことを認識する必要がある」と。 今後、アフガニスタンがオサマ・ビン・ラディンのみならずその一派をアメリカか国際法庭に引き渡さなければ、ほぼ確実に戦争が起こるだろう。その時また無実の一般市民が多数巻込まれることになる。また今後もアメリカが自分たちの国益だけで人権や国際法を無視し、そのおかけで間接的にしろ多数の人が苦しむなら、これまたテロを巻き起こす可能性がある。また、国連や国際法の指針となっている「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、ブッシュが実質上宣戦布告した直後に、目的のためにあらゆる手段をも正当化する戦争は一種のテロリズムだと、アメリカに対して警告を発している。 世界貿易センターがテロ攻撃を受けた後、ニューヨークのユニオン・スクエアでは、犠牲者を悼むメモリアル・ノートが書き寄せられていた。中のひとつにこんなのがあった、“Don't fight back. We need apeaceful global revolution.”そうなる日が来ることを祈りたい。 著者紹介: Q サカマキ ジャーナリスト・写真家。ボスニア、コソボ、アフガニスタンなどの紛争地帯を取材し戦争の根っことなる原因を探る。 コロンビア大学で国際紛争の解決と人権を専攻し、国際関係の修士号取得。 |